ルワンダを知ろう・・・ルワンダの教育の現状と問題点のアイキャッチ

ルワンダの教育の現状と問題点

ルワンダを知ろう・・・今回は私たちが「NPO法人ルワンダの教育を考える会」を設立した理由に直結する「ルワンダの教育の現状と問題点」について触れたいと思います。

私たち「NPO法人ルワンダの教育を考える会」は、内戦(ジェノサイド)で心身ともに傷ついたルワンダの子どもたちに、『教室で学びながら夢を取り戻してほしい』という願いのもと、ルワンダの首都キガリにウムチョムィーザ学園(幼稚園・小学校)』を建設しました。今年2024年までに300名以上の生徒を送り出し、『貧困であっても夢を持った子供たち』を世に送り出すという目的を一定程度果たすことが出来ていると評価しています。

しかし、ルワンダでは貧困に基づく就学率や進級率の低さがまだまだ解消されたとは言えず、さらに大学への進学率に至っては10%程度しかなく、ルワンダの掲げるICT立国を支える高等教育を受けた人材の数は不足していると言わざるを得ません。貧困でも成績優秀で意欲ある子供たちにいかにして義務教育とそれに続く高等教育が受けられる基盤を作るか、そして今後ルワンダの発展に寄与する人材を国としていかに多く育成するか、という大きな課題が残っています。ここでは、ルワンダの教育の現状と問題点を取り上げて解説したいと思います。

【熱心に勉強に励むルワンダの子どもたち】

【IT立国の戦略に基づいて先端的な教育も】

 

1.ルワンダの教育制度

ルワンダの教育制度は、日本と同じ6-3-3-4制です。はじめの6年間が、日本の小学校にあたるプライマリースクール(Primary School)。続いて中学校、高校にあたるセカンダリースクール(Secondary School)も同じく6年間の教育ですが、前半の3年間がOrdinalレベル(Oレベル:中学校)、後半の3年間がAdvancedレベル(Aレベル:高校)と呼ばれています。そして最後の4年間が大学という構成です。

ルワンダの義務教育は、小学校(プライマリースクール)の6年間と中学校(セカンダリースクールOレベル)の3年間を合わせた9年間です。大学や職業訓練学校(専門学校)に進学するために高校(セカンダリースクールAレベル)を卒業する必要がある点も、日本と類似しています。

この他にも、ルワンダでは就学前教育として、日本の幼稚園にあたるPre-nursery school13歳児対象)とNursery school46歳児対象)があります。

 

2.ルワンダの教育の現状

少し古いですが、ルワンダの生徒数や就学率(純就学率)のデータです。純就学率(Net Enrolment Rate)は、本来入学すべき年齢の児童数だけを、その年齢の人口で割った割合です。小学校(Primary School)の就学率に比べて、幼稚園(Nursery School)、中高校(Secondary School)、大学の就学率は極端に落ちてしまいます。小学校だけは最低限通わせてあげている家庭が多い一方で、大学まで一貫して勉強を続けられる子供はごく僅かであることが分かります。

表1 生徒数や就学率(2018年)

(学習者数:360万人、職員数:9.5万人、学校数:1.3万校)

年齢 就学率
4-6歳(幼稚園:Nursery 31.8%
7-12歳(小学校:Primary 98.6%
13-18歳(高校:Secondary 72.4%
19-23歳(大学) 9.8%

更にルワンダの教育省が2019年に発表した「Education Statistics」をもとにルワンダの教育の現状を細かく見てみます。各校種別の粗就学率と純就学率は以下の通りです。

表2 各校種別の粗就学率と純就学率

校種 粗就学率
Net Enrolment Rate
純就学率
Gross Enrolment Rate
幼稚園(Nursery 29.8% 24.6%
小学校(Primary 138.8% 98.5%
中学校(Secondary 42.5% 24.5%

粗就学率(Gross Enrolment Rate)とは、その年に入学した児童数全体を、その年に入学すべき年齢の人口で割った割合です。そのため、本来入学すべき年齢よりも遅れて入学する児童も含まれるため、100%を超えることがあります。このデータを見ると、小学校の就学率は高いのに対し、幼稚園や中学校に本来入学すべき年齢で入学できている子どもの数はかなり少ないと言えます。中学校への就学率の低さとともに、幼稚園の就学率(入園率)の低さも目立ちます。

【嬉しそうに学校に集まる子供たち】

 

続いて、小学校の最終学年(6年生)への進級率を表2に示します。

表3 2019年の小学校最終学年進級率

指標 進級率
粗最終学年進級率
Gross Intake Rate in P6
95.4%
純租最終学年進級率
Net Intake Rate in P6
27.5%


粗最終学年進級率(Gross Intake Rate in P6)は、その年の最終学年の児童数から、前年度留年して最終学年に残っている児童数を除き、その学年に当たる年齢の人口で割った割合です。また、純租最終学年進級率(Net Intake Rate in P6)は、本来6年生になる年齢の児童で最終学年に進級した児童の数を、その学年に当たる年齢の人口で割った割合となります。

多くの児童が小学校の最終学年まで進級できている一方で、本来卒業すべき年齢で卒業する児童は約4人に1人しかいないと言えます。つまり多くの児童が就学時期の遅れ、または留年を経験していると予想できます。

【楽しそうな子供たちの夢をかなえたいが……】

 

3.ルワンダの教育の問題点

小学校では多くの児童が就学している一方で、進級率が低い点は、ルワンダの教育の問題点の1つと言えます。それらは「卒業率の低さ」という形でも影響を及ぼしています。ユニセフが2019年に発表したCountry Profileでは、小学校の卒業率が65.2%という結果が示されています。

この原因には、退学や留年(いわゆるドロップアウト)の多さが大きく影響していると考えられます。事実、2018年から2019年にかけての留年率は10.0%、退学率は7.8%にも及びます。仮に40人のクラスで考えると、毎年4人の児童が留年し、3人の児童が退学していくことになります。これが1年生から6年生まで続くとすると、同じ年に入学した同級生のうち、一緒に卒業できるのはたったの15人になります。

この留年や退学の原因として考えられるのが「貧困」です。ルワンダの絶対貧困率(1日1.9ドル以下で生活している人の割合)は、56.5%にも上ります。子どもを学校に通わせることは家計をひっ迫させるだけでなく、家計を助けるための労働力として子どもを必要とする家庭も多く存在します。そのため、多くの子どもが未だに教育を諦めなければならない状況が続いていると考えられます。ルワンダの義務教育は基本無償ですが、義務教育期間(9年間)に必要となる学用品を揃えたり、衣食住にかかる費用が捻出できずに途中で通えなくなる子供はよく目にしますし、家を出ていわゆるストリートチルドレンとして生活している子供もいます。

また、ルワンダの教育が抱える問題には教師数の不足」も挙げられます。小学校の教師1人に対する児童の数は、日本が16.2人なのに対し(注6)、ルワンダの小学校では60人です(2018年時点)。これは、30年前に起きたジェノサイドが大きく関係しているものと考えられます。ジェノサイドでは80ー100万人が犠牲になったと言われていますが、現在丁度教師として活躍したであろう年代の若者が数多く亡くなっているからです。教員の不足は、児童1人が恩恵を受けられる教員の支援の不足にもつながり、教育の質を確保することが難しくなります。このあたりも先程の進級率や卒業率に少なからず影響を与えている可能性があると考えられます。

私たち「NPO法人ルワンダの教育を考える会」は、貧困のために学校に通えない子供たちを長く支援してきました。ルワンダ政府も教育の充実に多くの投資をし始めていますが、述べてきた問題や課題はすぐに解決できるものではありません。私たちとしては、皆様のご支援・ご協力を得ながら、今後会としてどのような支援が必要なのかを見極め「夢を持った子供たちの育成と支援」活動を粘り強く継続していきたいと考えています。

【教室で笑顔の子供たち】